2023年8月13日日曜日

多様性について

 皆さま、こんにちは。工業高校の主任として働いている者です。今日は少し、「深い」そして「難しい」内容について書きます。

先日、NewsPicksの記事「『「多様性」にムカつくこと』というトピックス」を読みました。この記事を読んで、工業高校の視点からも「多様性」についての意義や問題点に思うところがあったので、お話ししたいと思います。

工業高校に通う生徒たちは、将来、技術者として様々な業界で活躍することを目指しています。その中には、性別、文化や生き様など、さまざまなバックグラウンドを持つ生徒たちがいます。この「多様性」は、私たちの学校の強みであり、新しい発想やアイディアを生む原動力となっています。

記事で触れられていた「多様性の尊重推進」や「ニューロダイバーシティ」

【ニューロ・ダイバーシティは、教育や障害に対するアプローチであり、様々な神経疾患は普通のヒトゲノムの差異の結果として現れるのだ、ということを提唱する。この用語は、1990年代後半に、神経学的多様性は本質的に病的なものであるとする通説に対抗するものとして現れた。 ウィキペディアより】
といった言葉やスローガンが、時には「登ったら消えるハシゴ」(行きていく上では非常に重要なものだけど、手に入れた途端に消えていまう)として感じられることも確かです。それは、目指すべき「真の多様性」が達成された際には、もはやこれらのスローガン自体が不要になるからです。

この言葉はもともと、対人支援において語られてきた言葉ですが、例えば、少し前に「イクメン」という言葉が流行りました。父親なのだから自分の子どもの育児をするのはそもそも当たり前のことですが、本来当たり前のことが当たり前でない、何とかしなくてはいけない状況が、この社会には至る所にあります。課題の解決には、何らかのアクションが必要です。そこで出てくるのが何らかのハシゴ(手段)を用いて、社会課題の解決に向かおうとする発想です。重要なことは、このハシゴは登ったら不要になる、消えるハシゴだということです。イクメンの例で言うと、男性の育児が当たり前になったらこの言葉はもう必要がなくなります。

私たちの教育現場でも、技術や知識の習得だけでなく、多様な価値観や背景を尊重する心の持ち方を大切にしています。それは、一人一人の生徒が、自分の持っている才能や特性を最大限に活かすことができる環境を整えるためです。

もちろん、教育の現場でも「多様性の強要は画一的だ」と感じることもあります。しかし、そのような声があること自体が、我々が目指す「真の多様性」にまだ達していない証拠でもあります。多様性を尊重するための方法やアプローチは一つではありません。そして、その多様性を目指す過程で、さまざまな考え方や意見が出てくることは自然なことです。

私たちは、一人一人の生徒が持っている「多様性」を大切にし、それぞれの個性や能力を最大限に発揮できる環境を整えることを目指しています。そして、その多様性が真に尊重される日が来たとき、我々は「多様性」という言葉を使う必要がなくなるかもしれません。それが、真に一人一人が大切にされる社会、そして学校だと私は信じています。

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